【不動産賃貸経営】関西方式での敷金持ち回りを理解する収益物件購入のポイント

物件売却

不動産売買(不動産取引)には、関西と関東で異なる商慣習が存在します。これらの違いを理解することは、特に収益物件を購入し、不動産賃貸経営を行う際に非常に重要です。本記事では、関西方式での敷金持ち回りを中心に、関東と関西の商慣習の違いについて解説します。

 

収益物件売買時の敷金・保証金の持ち回り

関東・関西共通の原則

敷金や保証金は、賃借人が退去する時に賃貸人が賃借人に対して返還しなければならない債務です。この返還債務は、所有権の移転に伴って売主から買主に引き継がれます。賃貸人の地位を承継した建物の新所有者は、前所有者が賃借人から預かった敷金返還債務全額を承継することになります(最判昭和44年7月17日判決)。

関東と関西の商慣習の違い

関東と関西では、収益物件売買時の敷金・保証金の持ち回りに関する商慣習が異なります。特に、売主が賃借人から預かっている敷金や保証金に相当する現金を、買主に交付するか否かに関して違いがあります。

関東の商慣習

関東では、売主から買主に引き継がれる敷金返還債務の金額を売買代金から差し引いて決済します。

例:

  • 不動産売買価格:2億円
  • 敷金返還債務:5000万円
  • 実際の売買代金:1.5億円

関西の商慣習

関西では、敷金返還債務の金額を売買代金から差し引かずに決済します。これを「敷金の持ち回り」と呼びます。

例:

  • 不動産売買価格:2億円
  • 敷金返還債務:5000万円
  • 実際の売買代金:2億円

注意点

関西と関東の商慣習の違いは、不動産の所在地によって適用されます。売主・買主のどちらかが関東、あるいは関西である場合には特に注意が必要です。

特に関東の方が関西の物件を購入する場合、敷金や保証金が返還されると思って契約に合意していたためトラブルに発展するケースもあります。そのため、関東と関西の商慣習の違いを理解しておくことが重要です。

 

固定資産税・都市計画税精算の起算日

固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日の登記簿上の所有者に対して課税されます。

関東の商慣習

関東では、固定資産税・都市計画税の精算の起算日は1月1日です。

関西の商慣習

関西では、固定資産税・都市計画税の精算の起算日は4月1日です。

特に関西の収益物件を1月~3月に取引する際には、次期の固定資産税・都市計画税も精算することを忘れないように注意しましょう。

 

司法書士報酬の負担者

通常の不動産売買では、必要な登記手続きの順序があります。

  1. 住宅ローンの登記(抵当権)があるときの抵当権抹消登記
  2. 売主から買主への所有権移転登記
  3. 買主の住宅ローンの抵当権設定登記

関東の商慣習

関東では、抵当権抹消登記(①)は売主が負担し、所有権移転登記(②)および抵当権設定登記(③)は買主が負担します。一人の司法書士が全て行うのが一般的です。

関西の商慣習

関西では、抵当権抹消登記(①)は売主が負担し、所有権移転登記(②)および抵当権設定登記(③)は買主が負担しますが、売主と買主それぞれ別の司法書士が行うのが一般的です。抵当権設定登記(③)の司法書士が金融機関指定の場合には、司法書士が3名になる場合もあります。

中には、所有権移転登記(②)の費用を「売渡に要する費用」と「所有権移転費用」に分けて、前者を売主が、後者を買主が負担するケースもあります。

 

不動産賃貸経営や収益物件の購入を検討する際には、関東と関西の商慣習の違いをしっかりと理解しておくことが重要です。これにより、契約上のトラブルを避け、円滑な取引を実現することができます。

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