【賃貸不動産オーナー向け】REITと不動産小口化商品の違いとメリット・デメリットを徹底比較

節税&相続

不動産投資は安定収益が期待できる一方で、初期投資額が大きくなる傾向にあります。そこで近年では、REITと呼ばれる不動産投資信託や、不動産小口化商品と呼ばれる小額からの不動産投資商品が注目を集めています。

REITと不動産小口化商品はどちらも、個人でも手軽に不動産投資に参加できる仕組みです。しかし、両者には一長一短があります。賃貸不動産オーナーの皆さまには、これらの違いを理解した上で、自らの投資目的や資金計画に合わせて相続対策を選択することが重要です。

 

はじめに

REITと不動産小口化商品の違いを理解する重要性

賃貸不動産オーナーの皆さまにとって、REITと不動産小口化商品の違いを理解することは非常に重要です。

両者は投資対象や収益の性質、リスク特性などが異なるため、自身の投資目的やリスク許容度に応じて適切な選択を行う必要があります。

例えば、以下のような違いがあります。

項目

REIT

不動産小口化商品

投資対象

複数の不動産

特定の不動産

収益の性質

配当収入

賃料収入

流動性

高い

低い

このように、REITと不動産小口化商品では特徴が全く異なります。

本記事では、両者の違いを徹底的に比較し、それぞれの特徴を明らかにします。賃貸不動産オーナーの皆さまが、不動産小口化商品をより深く理解ができるようサポートいたします。

 

REITとは

REITの概要と仕組み

REITとは、不動産投資信託(Real Estate Investment Trust)の略称です。投資家から集めた資金で収益用不動産(オフィスビル、商業施設、住宅など)を取得・運用し、その賃料収入などを投資家に分配する仕組みになっています。

REITを運用するのは資産運用会社で、投資家は実際の不動産の運営に関与することはできません。REITの収益は賃料収入が中心で、投資家には分配金として支払われます。

REITの種類(特化型REITと複数用途型REIT)

REITには主に以下の2つの分類方法があります。

  • 公募か私募か

種類

概要

J-REIT

金融商品取引所に上場されているREIT。株式と同様に取引できる。

私募REIT

機関投資家など一部の投資家のみを対象とする。

  • 特化型か複数用途型か

種類

説明

特化型REIT

特定の不動産に特化して運用するREITです。オフィスビルや住宅、ホテル、物流施設など、単一の用途の不動産に投資を行います。投資対象が明確で分かりやすいのが特徴です。

複数用途型REIT

様々な用途の不動産に投資するREITです。オフィスビル、商業施設、住宅など、複数の不動産用途にポートフォリオを分散させることで、リスク分散を図っています。用途による収益変動のリスクを軽減できます。

特化型REITは投資対象が明確で分かりやすい一方、特定の不動産市況に左右されるリスクがあります。一方、複数用途型REITはポートフォリオの分散投資によりリスクが分散される反面、運用の複雑さが増します。投資家のニーズに合わせて、それぞれの長所・短所を考慮する必要があります。

 

不動産小口化商品とは

不動産小口化商品の概要と仕組み

不動産小口化商品とは、投資家が少額から不動産に投資できる商品のことを指します。投資対象となる不動産は、賃貸マンションやオフィスビル、商業施設などの収益不動産です。

不動産小口化商品で受け取れた利益は、出資割合に応じて、出資した投資家へ分配されます。

不動産小口化商品の種類

不動産小口化商品には、主に以下の3つの種類があります。

種類

概要

任意組合型

複数の投資家が出資して組合を組成し、組合が不動産を購入・運用します。

匿名組合型

運用会社が不動産を選定・購入し、投資家は出資する形式です。

不動産クラウドファンディングはこれに該当します。

信託受益権型

不動産を信託し、その受益権を販売する形式です。

これらの商品では、投資家が不動産の管理・運営をすることなく、不動産から得られる賃料収入の一部を受け取ることができます。また、不動産売却時の売却益の分配を受けられるのも特徴です。

不動産小口化商品について詳しくはこちら↓
https://sogo-office.com/real-estate-small-lot-products/

 

REITと不動産小口化商品の違い

(1)投資対象の違い

REITと不動産小口化商品では、投資対象が大きく異なります。

REITは、投資法人が不動産や不動産関連資産を保有し、その賃貸収益から配当を投資家に支払う仕組みです。つまり、REITへの投資は不動産そのものではなく、不動産を保有する投資法人への投資になります。

REIT

不動産小口化商品

不動産投資法人への投資

不動産そのものへの投資

一方、不動産小口化商品は、投資家が実際の不動産を分割して購入する仕組みです。投資家は小額で不動産そのものを所有することができます。

このように、REITは間接的な不動産投資であり、不動産小口化商品は直接的な不動産投資という違いがあります。投資対象の違いから、得られる収益の種類や流動性などの面でも大きな違いがあります。

(2)得られる収益の違い

REITの場合、投資家は保有するREIT口数に応じて、REITが保有する不動産からの賃料収入や売却益の一部を配当として受け取ることができます。一方で、不動産小口化商品の場合は、実際に不動産を共有する形になるため、賃料収入や売却益を直接受け取ることができます。

つまり、REITは間接的に不動産からの収益を得るのに対し、不動産小口化商品は直接的に収益を得ることができるという違いがあります。

区分

REITの収益

不動産小口化商品の収益

収益の種類

配当

賃料収入、売却益

収益の性質

間接的

直接的

また、REITの配当については、通常は他の株式と同様に「配当所得」として確定申告が必要になりますが、一定の要件を満たせば「上場株式等の配当所得」として申告不要となる場合があります。一方、不動産小口化商品の収益は不動産収入として扱われるため、確定申告が必要となります。

(3)流動性の違い

REITと不動産小口化商品では、流動性に大きな違いがあります。

REITは上場されているため、株式市場で日々売買が行われています。つまり、投資家は必要に応じて随時売買が可能で、高い流動性を持っています。

一方、不動産小口化商品は、ファンドの運用期間中は原則として換金できません。仮に中途解約できる商品であっても、解約控除があるなど流動性は低くなります。以下の表のように、流動性の違いは大きいと言えます。

REIT

不動産小口化商品

高い

低い

このように、REITは株式と同様に売買が自由にできるのに対し、不動産小口化商品は長期に渡り資金が拘束される点が大きな違いです。投資に際しては、お金の入出金のタイミングなども勘案する必要があります。

(4)税制面での違い

REITと不動産小口化商品では、税制面で大きな違いがあります。

REITの配当に対しては、以下のように課税されます。

課税の種類

税率

配当所得

20.315%程度

一方、不動産小口化商品から得られる賃料収入は、不動産所得として扱われます。所得税率は総合課税となり、最高で45%程度の税率となります。

また、相続税対策としても不動産小口化商品には有利な面があります。REITは金融資産として扱われるため、全額が相続税の課税対象となりますが、不動産小口化商品は物件を持つため通常の不動産と同じく、路線価や固定資産税評価額により相続税が評価され、相続税負担が軽減される可能性があります。

このように、REITと不動産小口化商品では、税制面で大きな違いがあるためしっかりと理解しましょう。

 

5.REIT・不動産小口化商品のメリット・デメリット

メリット

デメリット

REIT

分散投資が可能

高い流動性

配当所得として課税

実物資産を所有できない

運用会社への依存度が高い

不動産小口化商品

少額から実物資産投資が可能

相続税対策に有効

賃料収入が得られる

流動性が低い

物件の選別が重要

運用管理は不動産管理会社に一任

 

REITと不動産小口化商品の違いまとめ

REITと不動産小口化商品は、不動産に投資する手段として共通点がありますが、大きな違いもあります。

項目

REIT

不動産小口化商品

投資対象

複数の不動産等

特定の不動産物件

収益

配当金

不動産の賃貸収益

流動性

上場REITは株式同様の取引可能

原則非流動的

税制

配当金として課税(20.315%程度)

総合課税(最高で45%程度)

このように、REITは分散投資が可能で流動性が高い一方、不動産小口化商品は特定物件への投資となり原則非流動的です。メリット・デメリットを理解した上で、自身の投資目的に合わせて選択することが重要でしょう。

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