空き家対策強化へ:不動産売買仲介手数料上限緩和に向けたパブリックコメント募集開始

法改正

全国で増え続けている空き家。

その中でも、「放置された空き家」によるトラブルは年々増加傾向にあります。こうした状況を受け、政府は空き家対策と不動産売買の円滑化を目的として、不動産売買仲介手数料の上限を緩和する改正案を提案しました。

改正案の実効性や影響をより広く検証するためには、国民一人ひとりの意見が重要です。そのため、2024年5月2日に、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の一部改正案に関して意見募集(いわゆるパブリックコメント)が開始されました。

 

追記:2024年6月21日、『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額』が改正されました↓↓

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日本全国で増加する空き家問題

日本全国で空き家の増加が深刻な問題となっています。特に地方都市や過疎地域では、住民の減少や高齢化に伴い、使われなくなった住宅が増え続けており、地域社会や景観、さらには防災面での課題も浮き彫りになっています。

「令和5年住宅・土地統計調査」結果によると、日本の総住宅数は6502万戸で過去最多でした。その中で常に居住していない「空き家」の数は、全国で900万戸に達し、空き家率は13.8%にまで上昇しています。およそ7軒に1軒が空き家となります。

さらに、放置されている可能性の高い「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に限定すると、385万戸、空き家率は5.9%となります。空き家のうち40%以上が該当するという現状です。

空き家が放置されると、建物は急速に老朽化し倒壊する危険性が高まってきます。庭木や草も伸び放題となると、周囲の景観を乱したり、害獣や害虫による衛生面の問題が生じる可能性もあります。また、犯罪の温床になる、不法侵入者が住みつくなどトラブルを引き起こす原因になりかねません。

しかし、住宅が建っていた方が更地にするよりも減税になるといった固定資産税の減額措置もあり、空き家の所有者は建物の解体には消極的です。

空き家といえど、住宅は個人の財産なので、国や自治体が勝手に立ち入ったり、取り壊したりすることは簡単にはできません。そもそも、相続により所有者が変わっていても登記が変更されていないため、現在だれが所有者なのかすら分からないケースも多いのです。

そういった背景もあり、政府や自治体も空き家対策はとっていますが、なかなか空き家問題解決までには至っていないのが現状でした。

参考サイト▼

令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果|総務省統計局

 

仲介手数料の上限規制を緩和する改正案が提案された背景

政府や自治体のこれまでの空き家対策

日本全国で空き家の増加が深刻な問題となっている中、政府や自治体はさまざまな対策を講じてきました。2015年には「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、自治体は空き家の実態調査や所有者への指導・助言を行う権限を持ちました。また、特定空き家に対しては、行政代執行による撤去も可能となりました。

さらに、多くの自治体では空き家バンクを設置し、空き家の情報を集約して公開することで、利用希望者とのマッチングを支援しています。加えて、空き家のリフォームや活用に対する補助金制度も設けられ、所有者が空き家を有効活用するための支援が行われています。

不動産業界における仲介手数料の現状とその上限規制緩和の経緯

不動産売買の仲介手数料は、取引価格に基づいて計算されるのが一般的で、日本では「取引価格400万円超の場合:取引価格の3%+6万円(税別)」が上限とされています。さらには、「取引価格200万円以下の場合:取引価格の5%(税別)」が上限です。

この上限規制は、消費者保護の観点から設けられており、高額な手数料を防ぐための措置です。しかし、この固定された上限が、特に取引価格が低い物件や困難な取引において、不動産業者の利益を圧迫する一因となっており、積極的に取り組む不動産業者は少ないと指摘されてきました。

このため、政府は不動産市場の活性化と空き家問題の解消を目指し、仲介手数料の上限規制を緩和する方向で検討を進めてきました。改正案の検討にあたっては、不動産業者の声や市場動向を踏まえ、より柔軟な手数料設定が可能となるような制度変更が求められてきました。こうした背景から、今回の改正案が提案されるに至ったのです。

上限規制の緩和によって、不動産業者は取引ごとに適切な手数料を設定できるようになり、空き家の売買取引が促進されることが期待されています。これにより、空き家問題の解消や不動産市場の健全な発展に寄与することが期待されています。

 

仲介手数料の上限規制緩和の内容と効果

改正案の具体的な内容

上記の背景を受けて改正案では、低価格な取引となるケースが多い空き家の売買などの仲介をした場合、価額が800万円以下であれば仲介手数料を従来の規定より多く受け取ることができるようにする内容となっています。

ただし、「30万円の1.1倍(税込)に相当する金額を超えてはならない」などの制限を設けており、さらに、長期間空き家の賃貸借の仲介についても、仲介手数料の上限を緩和する案となっています。

これによって、空き家が仲介市場に出回るようになることを期待しての改正です。

改正案が導入されることによって期待される効果

  1. 不動産取引の活性化仲介手数料の上限緩和により、不動産業者が低廉な空き家の取り扱いに積極的になることが期待されます。これにより、特に取引が滞りがちな低価格の空き家の売買が活発化し、不動産市場全体の流動性が向上します。
  2. サービスの質の向上柔軟な手数料設定が可能になることで、不動産業者は顧客に対して、より高品質なサービスを提供するインセンティブが高まります。これにより、消費者はより充実したサポートやアドバイスを受けることができ、取引の満足度が向上します。
  3. 空き家問題の解決促進空き家の売買や管理が促進されることで、放置された空き家が減少し、地域の景観や安全性が改善されます。これにより、空き家が原因となる犯罪や衛生問題も減少することが期待されます。
  4. 業界の競争促進手数料上限の緩和により、不動産業者間の競争が激化し、サービスの多様化が進むことが予想されます。消費者は、自分に合ったサービスや手数料を提供する業者を選ぶことができるようになり、市場の透明性と公平性が向上します。

このように、改正案の導入によって、不動産市場の活性化、サービスの質の向上、空き家問題の解決促進、業界の競争促進といった多岐にわたる効果が期待されています。政府は、改正案がより実効性のあるものとなるよう、広く国民からの意見を募集しています。

 

参考サイト▼

「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の一部改正案に関する意見募集について

 

追記:2024年6月21日、『宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額』が改正されました↓↓

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今後の動き

改正案へのパブリックコメント募集の動きを受けて、売買時の仲介手数料が増額になる前にといった理由で放置していた空き家を売却に出す動きも見られ始めました。また、相続登記の義務化や空き家の管理義務強化の効果もあり、空き家売却への動きはますます大きくなってくるでしょう。

 

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