不動産賃貸経営で無断転貸を見逃さない!オーナーが知っておくべきチェック方法と対処法

入居者トラブル

不動産賃貸経営において避けては通れない問題の1つに『入居者によるトラブル』があります。

その中でも最近多いのが、無断転貸(又貸し)です。特に最近増えているのが、オーナーの許可を取らずに行われている民泊です。

ここでは、無断転貸されているかどうかの確認方法と対処法について解説します。

 

1.無断転貸(又貸し)とは

賃借人が貸主の承諾なく第三者に転貸すること

不動産賃貸経営において、「無断転貸」とは、賃借人が貸主の承諾を得ずに第三者に物件を転貸することを指します。つまり、賃借人が契約の相手方である貸主に無断で、物件の賃借権を他人に譲渡してしまう行為です。

一般的な賃貸借契約では、賃借人による無断転貸は禁止されています。なぜなら、無断で第三者が入居すると、以下のようなリスクが生じるからです。

リスク

内容

属性不明

転借人の資産状況や属性が把握できない

責任所在が不明確

部屋の損傷時の責任の所在が曖昧になる

近隣トラブル

転借人による近隣トラブルが発生する可能性がある

このように無断転貸は、貸主にとって大きなリスクとなるため、契約書で原則禁止されています。

 

2.無断転貸のリスクと問題点

転借人の資産状況や属性が不明

無断転貸が行われている場合、オーナーは転借人の詳細を把握することができません。これにより、以下のようなリスクが生じます。

  • 転借人の収入や職業が不明

    家賃の支払能力が不透明

  • 転借人の属性(年齢層・家族構成等)が不明

    近隣トラブルのリスクが高まる

  • 連絡先が不明

    緊急時の対応が困難

さらに、転借人が賃借人に支払う家賃水準も不明確です。このように、無断転貸では転借人の詳細が不明確なため、様々なリスクが生じます。オーナーは十分に注意する必要があります。

部屋の損傷時の責任所在が不明確

無断転貸が発覚した場合、部屋の損傷に関する責任の所在が不明確になります。通常、賃借人が部屋の維持管理責任を負っていますが、無断で転貸した場合、次のような問題が生じる可能性があります。

  • 転借人が部屋を損傷した場合、修繕費用の負担者が不明確

  • 転借人の資産状況が不明なため、修繕費用を請求できない恐れ

下記のように、賃借人と転借人の間で責任が行き来する事態にもなりかねません。

賃借人の主張

転借人の主張

「転借人が損傷した。
転借人が修繕費用を払え」

「賃借人が部屋を貸したのだから、
賃借人が修繕費用を払うべき」

このように、責任の所在が不明確になると、トラブルの長期化や、結果的に貸主であるオーナーが修繕費用を負担せざるを得なくなる恐れがあります。

近隣トラブルのリスクがある

無断転貸が発覚した場合、入居者の属性や資産状況が不明であることから、近隣住民との間でトラブルが生じるリスクがあります。

転借人が以下のような人物だった場合、近隣住民から苦情が寄せられる可能性が高くなります。

  • 深夜の騒音や夜這いなど、迷惑行為を行う人物

  • 暴力団関係者など、反社会的勢力

  • ペットの放し飼いなどのルール違反者

  • 家族間のもめ事や夫婦げんかが絶えない人物

このようなトラブルが生じた場合、貸主である賃貸オーナーが入居者に対して何らかの指導や是正を求められる立場に立つことになります。しかし、無断転貸の場合は賃借人と転借人の関係が不明確なため、トラブル解決が非常に難しくなります。

つまり、無断転貸が発覚すれば、近隣トラブルに巻き込まれるリスクが高まり、その対応に多大な労力を強いられる可能性があるのです。

転借人への家賃請求が承諾と見なされる可能性

無断転貸が発覚した場合、貸主が転借人に直接家賃を請求すると、以下のようなリスクがあります。

  • 賃貸借契約が事実上成立したと見なされる可能性

  • 転借人との間で賃貸借契約関係が形成されたと判断される恐れ

つまり、転借人への家賃請求は、無断転貸を黙認したとみなされかねません。そうなれば、以下のような事態に発展する可能性があります。

リスク

内容

契約解除が困難

転借人との賃貸借契約が成立したと見なされ、解除が難しくなる

明渡し請求ができない

転借人に対する明渡し請求権が発生しない

損害賠償請求ができない

転借人に対する損害賠償請求ができない

このように、無断転貸への対処を誤ると、かえって転借人との法的トラブルに発展する恐れがあります。従って、無断転貸が発覚した際は、専門家に相談するなど、慎重な対応が求められます。

 

3.無断転貸発覚時の対応

事実関係を確認する

無断転貸の事実を確認するには、まず入居者の様子に注意を払うことが大切です。

例えば、以下のような点に気をつけましょう。

  • 普段の様子と異なる出入りの頻度や時間帯

  • 複数世帯が出入りしている兆候

  • ゴミの量や生活音の変化

  • 不審な人物の出入り

管理人等から聴取し、このような兆候があれば早めに現地確認を行い、状況を把握する必要があります。入居者に事情を確認し、転貸の有無を確かめましょう。

また、民泊施設として利用されているかどうか確認するには、民泊用ポータルサイトやホテル予約サイトにアクセスし、ご自身の物件が登録されていないか確かめましょう。

転貸の事実が判明した場合、次に重要なのは転借人の詳細です。以下の情報を収集することが求められます。

確認項目

内容

転借人の人数

単身か家族か

年齢層

高齢者や子供の有無

職業

収入源の確認

連絡先

緊急時の連絡手段

このような事実関係の確認を怠ると、後々のトラブル対応が難しくなります。早期の正確な情報収集が不可欠なのです。

管理会社や専門家に相談する

無断転貸が発覚した際は、早期に専門家に相談することをおすすめします。賃貸経営に詳しい管理会社や弁護士などの専門家に相談することで、適切な対処法を提案してもらえます。

各専門家の役割は以下の通りです。

専門家

役割

管理会社

現地確認、賃借人との交渉、解約手続きなどを代行

弁護士

法的見地から適切なアドバイスを提供

管理会社や専門家に相談することで、以下のメリットがあります。

  • 法令や判例に基づいた適切な対応が取れる

  • 賃借人との交渉が専門家に一任できる

  • 解約手続きなどの手間が省ける

無断転貸への対処は専門性が高いため、一人で抱え込まず、早期に専門家に相談することが賢明です。

賃借人と話し合いを試みる

無断転貸が発覚した場合、まずは賃借人に事実関係を確認し、話し合いを試みることが重要です。話し合いでは、以下のような点について丁寧に説明し、理解を求めましょう。

  • 契約書に「無断転貸を禁止」と明記されていること

  • 無断転貸は契約違反に該当すること

  • 無断転貸は近隣トラブルや部屋の損傷など、様々な問題のリスクが高いこと

  • 話し合いに応じない場合は、やむを得ず契約解除に踏み切らざるを得ないこと

話し合いでは、丁重な態度を心がけつつ、冷静に状況を説明します。相手の事情も聞きながら、双方にとって最善の解決策を見出せるよう努めましょう。

例えば、以下のような解決策が考えられます。

解決策

内容

転借人の住み替え

転借人に住み替えを求め、賃借人が直接入居する

名義変更

転借人との間で新たに賃貸借契約を結び直す

一時的な容認

一定期間、転貸を容認した上で期限後は是正を求める

話し合いの際は、双方の主張を丁寧に聞き、冷静に対応することが大切です。一方的な要求は避け、お互いに建設的な提案ができる関係を築くことが重要となります。

話し合いが難しい場合は契約解除を検討

賃借人と無断転貸の事実関係について話し合いを試みましたが、話し合いが難航する場合は、契約解除を検討する必要があります。

契約解除の可否

説明

原則

無断転貸は借地借家法第32条の「賃借人が借家に正当な理由がなく第三者を住ませた場合」に該当するため、契約を解除できます。

例外

ただし、次のような場合は契約解除が認められないことがあります。
・賃借人が一時的に他の場所に住んでいるだけの場合
・貸主が黙認していた場合

契約解除の手続きには注意が必要です。まず、賃借人に対して文書で無断転貸の事実と契約解除を求める旨を通知します。その後、一定期間を経ても是正されない場合に、改めて契約解除を通知します。通知の内容や期間には法律上の定めがあるため、専門家に相談するのが賢明です。

 

4..無断転貸発覚時の契約解除

原則として無断転貸は契約違反に該当する

無断転貸は、賃借人が貸主の承諾を得ずに第三者に部屋を転貸することであり、建物賃貸借契約に違反します。賃貸借契約に「転貸の禁止」条項がある場合は、無断転貸は明らかな契約違反となります。

契約違反の可能性

内容

高い

契約書に「転貸の禁止」条項がある場合

高い

転借人の資産状況や属性が不明確な場合

低い

契約書に「転貸の承諾」条項がある場合

ただし、一定の例外として、以下のような場合は無断転貸が認められる可能性があります。

  • 契約書に「転貸の承諾」条項がある場合

  • 一時的な転貸で、賃借人が引き続き転借人を監督している場合

  • 賃借人と極めて密接な関係にある者への転貸の場合

このように、無断転貸が契約違反に該当するかどうかは、契約内容や転貸の態様によって判断が分かれます。不動産オーナーは個別具体的な事情を踏まえ、専門家に相談するなどして適切に対応することが重要です。

一定の例外を除き、契約解除が可能

無断転貸は原則として契約違反に該当するため、賃貸借契約を解除することができます。ただし、以下のような例外的な場合は、契約解除ができない可能性があります。

例外

内容

黙示の承諾

賃貸人が長期にわたって転借人の存在を知りながら放置していた場合

信義則違反

転貸を認めないのが信義に反する特段の事情がある場合

軽微な違反

短期間の転貸など、違反の程度が軽微な場合

このように、転貸の経緯や状況によっては例外的に契約解除ができない場合もあります。賃貸人は契約解除の可否について、弁護士や管理会社等の専門家に相談することが賢明でしょう。

解除の手続きを誤ると、かえって賃貸人が損害賠償責任を負うリスクもあるため、十分な注意が必要です。

解除手続きには注意が必要

無断転貸が発覚した場合、契約解除に踏み切ることがあります。ただし、解除手続きには注意が必要です。

まず、次の点に気をつける必要があります。

  • 解除申入書の作成と内容

    • 解除理由を明確に記載する

    • 解除の効力発生日を明記する

    • 原状回復費用の概算額を記載する

  • 解除申入書の送達方法

    • 内容証明郵便など、確実に相手に到達する方法を選ぶ

加えて、解除に至る経緯を詳細に記録しておくことが重要です。

項目

内容

日時

いつ、無断転貸を発見したか

経緯

どのように発見したか

対応

賃借人との話し合いの有無と内容

万が一、賃借人から解除の効力を争われた場合にも、これらの記録が裏付け資料となります。無断転貸への対応では、法的リスクも考慮する必要があるのです。

 

5.まとめ

無断転貸は、賃貸経営においてリスクが高く、適切な対処が必要不可欠です。

まずは無断転貸の発覚時に、次の対応を行うことが重要です。

  • 事実関係を確認する

  • 管理会社や専門家に相談する

  • 賃借人と話し合いを試みる

話し合いで解決が難しい場合は、原則として契約解除が可能です。ただし、解除手続きには注意が必要です。

手続きの要点

説明

催告

転貸状態の解消や修繕費用の支払いなどを求める

期間設定

適切な期間を設けて是正を求める

解除申入れ

期間経過後に契約解除を申し入れる

無断転貸は法的リスクが高いため、自身で判断するのではなく、専門家に相談しましょう。オーナーが適切な対処を行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

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