賃貸管理の業務効率化!外部委託のメリットと注意点

管理会社

 

1. 賃貸管理の委託とは

賃貸管理の委託とは、賃貸物件を所有する不動産オーナーが、専門の管理会社に対して物件の管理業務を委託することを指します。管理会社には、賃貸経営に係る様々な業務をお任せできます。

委託の種類には、以下の2つがあります。

委託の種類

内容

全部委託

物件の管理業務の全てを委託する方式

一部委託

管理業務の一部のみを委託する方式

全部委託の場合、家賃徴収から入居者対応、クリーニングなど、管理に係る全ての業務を管理会社に任せることができます。一方で一部委託は、オーナー自身で行う業務と管理会社に委託する業務を分けて行います。委託の範囲は不動産オーナーと管理会社との契約内容によって決まります。

 

2. 委託管理の契約形態

不動産管理委託契約

不動産管理委託契約は、不動産オーナーと管理会社の間で締結される契約です。この契約では、管理業務の範囲や報酬の支払い方法などが明記されます。

契約内容

説明

委託の範囲

管理会社に委託する業務の範囲を定めます。入退去対応、家賃徴収、クレーム対応など。

報酬

管理会社への報酬額や支払い時期を決めます。通常は家賃の3~5%程度です。

有効期間

契約の有効期間を設定します。自動更新条項を設けることが一般的です。

解約条件

契約解除時の条件を明記します。違約金の有無なども記載されます。

この契約を締結することで、オーナーは管理会社に管理業務を委託し、その対価として報酬を支払うことになります。管理会社は委託された業務を誠実に遂行する義務を負います。適切な契約内容を設定することが、トラブル防止につながります。

一般管理契約

一般管理契約とは、不動産オーナーが管理会社に賃貸物件の管理を全面的に委託する契約形態です。

管理会社の業務範囲は広範にわたり、以下の業務を一括して請け負います。

  • 入居者募集と契約更新の代行

  • 家賃の徴収と滞納督促

  • 入居者からのクレーム対応

  • 退去時の立ち会い

  • 定期的な物件点検

  • 清掃やクリーニング

  • 軽微なリフォーム工事の発注・監理

一般管理契約のメリットは、オーナーが賃貸経営に係る業務からほぼ完全に開放されることです。遠方の物件でも、管理会社に一任できるため、所有が容易になります。

一方で、管理会社への報酬として以下のような手数料が発生します。

手数料種別

金額相当

月次管理手数料

家賃の3~5%程度

賃貸仲介手数料

賃料の1ヶ月分相当

更新手数料

賃料の1ヶ月分相当

不動産オーナーは、管理会社の実績やサービス内容を精査し、物件の立地や規模に適した会社を選ぶ必要があります。

サブリース契約

サブリース契約は、管理会社がオーナーから物件を借り上げ、管理会社が直接入居者と賃貸借契約を結ぶ形態です。この場合、オーナーは管理会社に対してのみ家賃の支払い義務を負います。

サブリース契約

一般管理委託契約

契約当事者

オーナー ⇔ 管理会社 ⇔ 入居者

オーナー ⇔ 管理会社、オーナー ⇔ 入居者

家賃の流れ

入居者 → 管理会社 → オーナー

入居者 → オーナー

サブリース契約は、家賃徴収などの事務手続きが一元化されるメリットがありますが、管理会社が入居者に対して大きな権限を持つデメリットもあります。また、オーナーは入居者の選定権を持てないため、留意が必要です。

サブリース契約の場合、管理会社は賃料収入から管理費用を差し引いた残額をオーナーに支払う形になるため、管理費用の設定が不透明になりがちです。そのため、事前に詳細な説明を受ける必要があります。

3. 委託管理のメリット

管理業務の手間が省ける

賃貸物件の管理業務には多くの作業が伴います。例えば以下のような業務があげられます。

業務内容

具体例

入居者対応

入居者募集、契約更新、クレーム対応、退去立会い、現状回復工事手配

家賃管理

家賃の徴収、滞納督促

物件管理

各種点検、清掃・クリーニング、軽微なリフォーム工事

自主管理の場合、オーナー自身がこれらの業務を行う必要があります。一方、管理会社に委託すれば、これらの業務から解放されます。

特に遠方に所有物件がある場合、自主管理は現実的ではありません。しかし、委託管理であれば、遠隔地の物件でも適切に管理することが可能です。

このように、賃貸管理業務を外部に委託することで、オーナーの手間を大幅に省くことができるのがメリットの一つです。

遠方の物件でも所有可能

賃貸管理を外部委託すれば、遠方にある物件の所有も容易になります。自ら直接管理するには物理的に難しい場合でも、管理会社に一任すれば問題ありません。

例えば、次のようなケースが考えられます。

物件所在地

自主管理の難易度

本人の居住地と同一市区町村内

比較的容易

本人の居住地から2~3時間圏内

やや難しい

本人の居住地から4時間以上離れた地域

非常に難しい

遠方物件では、入居者対応や定期点検などの日常業務が億劫になりがちです。しかし、委託管理を活用すれば、遠隔地でも気軽に投資物件を所有できます。

管理会社によっては、遠方物件の管理でも手数料に上乗せはしない場合もあります。一方で、一部の会社では距離に応じて割増料金を設定しているケースもあるので、事前の確認が必要です。

プロの管理ノウハウが活用できる

管理会社には、長年の経験から培われた賃貸管理のノウハウがあります。例えば入居者募集では、効果的な広告掲載先の選定や応対の仕方など、高い入居率を実現するために最適化されたノウハウが詰まっています。

ノウハウの活用例

内容

入居者募集

広告掲載先の選定、応対の仕方

家賃徴収

滞納防止対策、督促方法

クレーム対応

トラブル解決の手順と対処法

退去立会い

原状回復と精算のポイント

また、法令遵守やトラブル対応などの難しい課題にも適切に対処できるため、個人の所有者が一から学ぶよりも手間が省けます。さらに、ノウハウのアップデートも継続的に行われているため、最新の知見を活用できるのがメリットです。

プロの管理会社なら、経験から蓄積された膨大なノウハウを最大限に活用できます。管理の質と効率を高めるうえで、このようなノウハウの活用は大きな強みとなります。

4. 委託管理のデメリット

委託管理費用が発生する

委託管理を活用する際のデメリットとして、管理会社への委託管理費用が発生することが挙げられます。この費用は、基本的に家賃の一定割合で設定されており、地域や物件の状況によって異なりますが、おおむね家賃の3~5%程度が相場となっています。

例えば、月額家賃が10万円の物件であれば、以下のような委託管理費用が発生します。

委託管理費率

月額委託管理費用

3%

3,000円

4%

4,000円

5%

5,000円

この委託管理費用は、管理会社がオーナーに代わって行う募集活動や家賃徴収、クレーム対応などの管理業務にかかるコストとなります。遠方物件の場合は移動コストも加わるため、更に費用が上乗せされる可能性があります。

したがって、自主管理との費用対効果を十分検討し、適切な委託管理会社を選定することが重要です。

自主管理への移行が困難になる

一旦管理業務を委託してしまうと、自主管理に戻すことが難しくなる可能性があります。委託期間が長くなればなるほど、オーナー自身の管理ノウハウが希薄化してしまいます。

また、管理会社によっては、自主管理への移行に積極的でない場合もあります。オーナーにとって有利な条件を提示されず、スムーズな移行が困難になるリスクがあります。

自主管理への移行が困難になる理由

・オーナー側の管理ノウハウの希薄化

・管理会社の非協力的な対応

・引き継ぎに伴う事務的な手続きの煩雑さ

長期にわたり委託管理を続けていると、自主管理に戻すための障壁が高くなってしまいます。自主管理に戻す意向があれば、できるだけ早期の移行を検討するのが賢明でしょう。

管理会社の能力次第で質が変わる

不動産管理業務は様々な分野にわたり、高度な専門性が求められます。したがって、委託先の管理会社の能力や実績によって、提供される管理サービスの質が大きく変わってきます。

良質な管理会社の例

劣悪な管理会社の例

高い専門性と経験

専門性と経験不足

迅速な対応

対応が遅れがち

コンプライアンス重視

コンプライアンス軽視

高い入居率実績

低い入居率実績

特に、管理会社の対応力の良し悪しが賃貸経営に大きな影響を及ぼします。 入居者からのクレームへの対応の遅れは、重大な問題に発展する恐れがあります。また、法令順守への理解が不十分な場合、トラブルに発展するリスクも高くなります。

そのため、管理会社を選定する際は、実績や対応力、コンプライアンス意識など、様々な観点から慎重に検討する必要があります。

5. 委託できる主な管理業務

入居者募集と契約更新

委託管理では、入居者募集から契約更新までの一連の業務を管理会社が代行してくれます。

具体的には以下の業務が含まれます。

業務内容

詳細

募集広告の掲載

ポータルサイトや自社サイトでの募集広告の掲載

内見対応

物件の内見への同行と説明

入居審査

入居希望者の審査と入居判断

契約手続き

賃貸借契約書の作成と締結

契約更新手続き

満了時の更新意向確認と更新手続き

特に入居者募集では、管理会社の広告運用ノウハウが活かされ、効率的な募集活動が期待できます。また、契約更新の際も、入居者との良好な関係を構築している管理会社なら、スムーズな対応が見込めるでしょう。

家賃の徴収と滞納督促

家賃の徴収と滞納督促は、賃貸管理において重要な業務です。管理会社は入居者から家賃を確実に回収し、滞納が発生した際には適切な督促を行います。

家賃徴収の流れ

1.毎月の家賃請求書を発行

2.入金確認と残高管理

3.滞納者への電話・文書による払い込み督促

滞納が長期化すると、明渡し請求に至る可能性があります。そうなる前に、管理会社は粘り強く滞納者と交渉を重ねます。

  • 分割払いの提案

  • 連帯保証人への連絡

  • 自治体の生活保護制度の紹介

など、様々な対応策を講じて状況の改善を図ります。

家賃回収は、オーナーの大切な収入源です。優れた管理会社は、きめ細かな対応で滞納を未然に防ぎ、オーナーの資産を確実に守ります。

クレーム対応と退去立会い

賃貸管理会社に委託すれば、入居者からのクレームや退去時の対応もすべて任せられます。

クレームの内容は多岐にわたり、家電製品の故障、設備の不具合、近隣とのトラブルなど様々です。管理会社では専門のクレーム対応スタッフが常駐しており、適切な対処を行います。

主なクレームの種類

対応例

備品等の故障

メーカーに修理を依頼

設備の不具合

専門業者に修理を依頼

近隣トラブル

双方の話を聞き、仲介する

また、退去時には立会いのもと、部屋の状況を確認します。入居時の原状回復が適切に行われているかをチェックし、違反があれば修繕費を請求するなどの対応を取ります。

このように、クレーム対応から退去立会いまで、賃貸管理会社に一任すれば、オーナー自身で対応する必要がなくなり、手間が大幅に省けます。

各種点検と清掃・クリーニング

賃貸管理会社に委託すれば、物件の定期的な点検や清掃業務もお任せできます。主な内容は以下の通りです。

  • 設備点検

    • エレベーターやオートロック設備、給排水設備など、建物の重要設備の年次点検

    • 漏水や故障の早期発見に役立ち、大規模修繕を未然に防ぐ

  • 清掃業務

    • 共用部分(エントランスや階段など)の清掃

    • 空室のクリーニングと入居前準備

項目

内容

設備点検

空調、給排水設備など

共用部清掃

エントランス、階段など

空室クリーニング

退去後の室内清掃

このように、管理会社に一括して委託すれば、オーナー自身で手間をかける必要がありません。点検や清掃を怠れば、建物の資産価値が下がる恐れがあるため、専門業者に任せるメリットは大きいでしょう。

軽微なリフォーム工事

賃貸管理を委託する際、軽微なリフォーム工事も一緒に依頼できるケースがあります。具体的には以下のような工事が該当します。

  • 畳の表替え

  • クロスやフローリングの張替え

  • 建具の交換

  • キッチンやバスルームの水廻り設備の交換

  • エアコンの取り付けや交換

入居者の入れ替わり時に必要となるリフォーム工事は、管理会社に一括して依頼できる便利さがあります。ただし、大規模な改装工事は別途業者を手配する必要があります。

工事の種類

管理会社に依頼できるか

畳表・クロス張替え

フローリング工事

建具交換

水廻り設備交換

エアコン工事

間取り変更

×

大規模リノベーション

×

管理会社によっては、リフォーム工事の請負業者が系列会社だったり、協力業者と提携していたりするケースもあります。一括発注できる利便性がある半面、工事の質や価格が適正なのか見極める必要があります。

6. 委託管理費用の相場

家賃の3~5%程度が一般的

賃貸管理を外部の専門会社に委託する際の委託費用は、物件の家賃の3~5%程度が相場となっています。

家賃例

委託費用の相場(月額)

5万円

1,500円~2,500円

10万円

3,000円~5,000円

20万円

6,000円~10,000円

一般的に、部屋数の多い物件ほど委託費用率は低くなる傾向があります。また、遠方の物件の場合は別途出張費用が発生するため、委託費用が割高になることもあります。

委託費用の内訳は、管理会社によって異なりますが、主に人件費と管理経費が含まれています。人件費は入居者対応や現地調査などの人的サービスに係る経費で、管理経費は入居者の入退去手続きや広告宣伝費などが当てはまります。

このように、委託管理には一定の経費がかかりますが、オーナー自身で賃貸管理業務を行うよりも手間暇がかからず、専門的な管理サービスを受けられるメリットがあります。

遠方物件は割増となる場合も

物件の所在地が管理会社から遠方にある場合、委託管理費用が割り増しされることがあります。これは遠方への移動コストが発生するためです。

管理会社の所在地から半径何kmを超えると割増料金が発生するかは、管理会社ごとに異なります。おおよその目安としては、以下のようになっています。

距離

割増料金

30km以内

なし

30km超~50km以内

5%程度

50km超

10%程度

遠方物件の割増料金率は管理会社によって異なるため、具体的な金額は個別に確認する必要があります。

ただし、遠方物件でも管理会社の拠点が近くにある場合は割増料金がかからないケースもあります。例えば、首都圏の物件を東京に拠点を置く大手管理会社に委託すれば、割増料金は発生しにくくなります。

7. 管理会社の選び方のポイント

サービス内容と専門性を重視

管理会社を選ぶ際は、サービス内容と専門性を重視することが大切です。管理会社によってサービス内容は様々で、以下のようなサービス内容の違いがあります。

サービス項目

内容

管理体制

社員数、専門スタッフの有無

入居者募集

広告媒体の種類、募集期間

クレーム対応

24時間対応の有無、対応体制

報告書の作成

報告書の内容と頻度

優良な管理会社は、サービス内容を明確に示し、高い専門性を持っています。例えば、高い入居率や低い空室率を実現している会社や、長年にわたり多くの管理実績があり信頼できる会社が挙げられます。

実際に管理会社を選ぶ際は、サービス内容を確認するとともに、過去の実績も重視して検討することが賢明です。自身のニーズにあった管理会社を選ぶことで、効率的で安心できる賃貸管理が可能になります。

高い入居率を実現している会社

物件の入居率は、管理会社の実力を判断する重要な指標の一つです。優れた管理会社は、的確な募集活動と適切な賃料設定により、高い入居率を実現しています。

入居率の高い管理会社を選ぶメリットは以下の通りです。

  • 空室リスクが低く、安定した家賃収入が見込める

  • テナント募集の手間が省ける

  • 入居者のクレーム対応などが手厚い

管理会社の入居率実績を確認する際は、以下の点に注目します。

確認ポイント

内容

入居率

90%以上が望ましい

空室期間

1か月以内が理想的

家賃改定頻度

毎年見直しているか

さらに、オーナー向けの情報開示の姿勢なども重要です。入居率や運営状況を定期的に報告してくれる会社を選ぶと安心です。

自社売買物件の管理を引き受ける会社

不動産会社が自社で売買した賃貸物件の管理を引き受けている場合、いくつかのメリットがあります。

  1. 物件の状況を熟知している :自社で売買した物件については、建物の構造や設備の状況を熟知しています。したがって、適切な管理がしやすくなります。

  2. 入居者への対応が円滑 :入居者への対応が円滑になります。なぜなら、入居者は物件の売主である不動産会社に直接相談できるためです。

  3. 物件の質が保たれる :物件の質を維持したいと考えている不動産会社は、自社売買物件の管理に注力するはずです。そのため、質の高い管理が期待できます。

メリット

内容

物件状況の熟知

建物の構造や設備を熟知

入居者対応の円滑化

入居者が直接相談可能

物件の質の維持

質の高い管理が期待できる

このように自社売買物件の管理を引き受ける不動産会社を選ぶと、様々なメリットが期待できます。適切な管理体制が整っている会社を選ぶことが重要です。

 

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