不動産を手放さずに資金調達!リースバックとリバースモーゲージを比較

物件売却

不動産売却の手法の1つとして『リースバック』という方法があります。

今回は、リースバックの仕組みやメリット・デメリット、リバースモーゲージとの違いなどを解説します。

1. リースバックとは

リースバックの定義と概要

リースバックとは、不動産を金融機関や事業者に売却し、売却した当人が賃借人として一定期間その物件に住み続けることができる仕組みです。

具体的には以下のような流れになります。

  1. 不動産所有者が金融機関や事業者などに物件を売却

  2. 売却代金を受領

  3. 売却した物件に賃借人として住み続ける

売主

買主

賃借人

不動産所有者

金融機関や事業者

元の不動産所有者

不動産を手放すことなく資金を調達でき、しかも住み続けられるというメリットがあります。一方で、売却価格が相場より低くなる可能性や、長期的に住み続けられない場合もあるなどのデメリットもあります。

 

2. リースバックの仕組み

リースバックの流れと手順

リースバックは以下の流れで行われます。

  1. 査定 金融機関・不動産業者が物件の適正価格を査定します。

  2. 売買契約 売主と買主で売買契約を交わします。この際、賃借条件なども取り決められます。

主な契約内容

内容

売買価格

査定価格などから決定

賃借期間

通常5年〜10年程度

家賃

売買価格の3〜6%程度

買戻し条件

期間や価格などを定める

  1. 所有権移転 売主から買主へ所有権が移転します。

  2. 賃貸借契約 買主が売主(賃借人)と賃貸借契約を結びます。

  3. 入居継続 売主は引き続き物件に住むことができます。

このように、売主は物件を売却して資金を得つつ、一定期間は賃借人として住み続けられるのがリースバックの特徴です。

関係者の役割(売主、買主、賃借人)

リースバックには3つの主要な役割があります。まず「売主」は、自身が所有する不動産を一旦売却します。次に「買主」は売主から不動産を購入し、所有権を取得します。最後に「賃借人」は、売却後も同じ物件に住み続けるため、買主から賃借します。

役割

説明

売主

自身の所有不動産を売却する

買主

売主から不動産を購入し、所有権を取得する

賃借人

買主から物件を賃借し、住み続ける

売主と賃借人は同一人物です。売主は不動産を売却することで資金を得られ、賃借人として住み続けられます。一方の買主は、不動産を購入し所有者となりますが、賃料収入も得られます。このように関係者に応じて異なるメリットがあります。

 

3. リースバックのメリット

住み続けられる

リースバックの最大のメリットは、物件を売却した後も、その物件に住み続けられることです。売却後も賃借人として物件に居住できるため、転居の手間が省けます。

特に高齢者にとっては、馴染みの地域から転居することで、生活環境の変化によるストレスが大きくなる可能性があります。リースバックを活用することで、これまでと同じ環境のまま生活を継続できます。

また、子育て世帯にとっても、通学する学校を変更する必要がなく、子どもたちの生活環境を維持しやすいメリットがあります。

つまり、リースバックの最大の魅力は、

  • 住み慣れた地域から転居する必要がない

  • 生活環境を変えずに済む

という点にあります。一方で、長期的に物件に居住できる保証はなく、一定期間の後に転居を余儀なくされるリスクもあることに留意が必要です。

短期間で資金調達可能

リースバックでは、不動産の買主が一括購入するため、売主は短期間で必要な資金を調達することができます。不動産の売買は、通常の媒介による売却に比べると非常にスピーディーに進行します。

具体的には以下のようなスピード感があります。

工程

通常売買

リースバック

査定

1週間程度

数日

売買契約

1ヶ月程度

1週間程度

資金入金

2ヶ月程度

1週間程度

リースバック業者は、すばやい査定と契約を売りにしています。多くの場合、物件の現地確認から1週間程度で買取金額が提示され、売主の意向次第で早ければ翌週には資金が入金されるのが一般的です。

このように、リースバックなら短期間で現金を手にすることができ、住宅ローン返済や医療費、事業資金といった緊急の資金需要に対応できるメリットがあります。

所有コスト・リスクが軽減

リースバックを活用することで、不動産の所有に伴うさまざまなコストやリスクを軽減できるメリットがあります。

具体的には以下のようなポイントが挙げられます。

  • 修繕費の削減
    賃借人となるため、大規模修繕が発生した場合の費用負担が不要になります。

  • 固定資産税の削減
    所有権が移転するため、固定資産税などの税金負担が大幅に軽くなります。

  • 売却リスクの回避 将来の売却リスクを回避できます。地価下落などで売却損が発生するリスクがなくなります。

所有時

リースバック活用時

修繕費・固定資産税の全額負担

修繕費・固定資産税の大幅削減

売却時の価格下落リスク

売却リスクの回避

このように、リースバックを活用すれば、これまで所有者が抱えていた様々なコストやリスクを大幅に軽減できるのが大きなメリットです。

買い戻しの可能性

リースバックでは、売却後にいつかは買い戻す機会があります。買戻しの条件は買主との契約次第ですが、一般的には以下のような条件が付されます。

条件

内容

期限

一定期間経過後に買戻し可能(5年や10年が多い)

価格

売却時の査定価格+買主の経費などを加算した金額

その他

現状有姿での買戻し、リフォーム費用の負担など

買戻し期限までは借家人として家賃を支払いながら住み続けられますが、期限を過ぎると立ち退きを求められる可能性があります。一方で、契約期間中であれば買主の同意があれば早期に買い戻すこともできます。

買戻しを希望する場合、きちんと計画を立ててその期間に必要な資金を準備することが重要です。準備ができなければ買戻しは難しくなるため、買戻し条件を十分に理解しておくことが大切です。

周囲にばれずに売却可能

リースバックの大きなメリットの1つに、周囲にばれずに住宅を売却できることが挙げられます。

従来の売却の場合、次の点から周囲にばれてしまう可能性があります。

  • 不動産業者の内見対応

  • 売出し広告の掲載

  • 購入検討者の内見対応

これに対し、リースバックでは以下のようにプライバシーが守られます。

従来の売却

リースバック

不動産業者の内見が必要

内見は最小限で済む

売出し広告を出す

広告は不要

複数の購入検討者の内見

買主は1社のみ

つまり、リースバックなら家族や近隣に気付かれることなく、スムーズに売却できるのです。

離婚や相続対策など、プライバシーが求められるケースにおいて、リースバックは有効な選択肢となります。ただし、次のようなデメリットにも留意が必要です。

 

4. リースバックのデメリット

リースバックには以下のようなデメリットがあります。

売却価格が相場より低い

売却価格は査定額より低く設定される傾向にあります。不動産業者は将来の家賃収入を見込んでいるため、割安な買取価格での売買になりがちです。

長期的に住み続けられない可能性

通常のリース期間は10年程度が一般的です。期間満了後の更新がなされない場合は、退去を余儀なくされます。

家賃の発生

物件の賃借人として毎月家賃を支払う必要があります。収入が乏しい高齢者などにとって大きな負担となります。

ローン残債が買取価格を上回る場合の制約

ローン残債が買取価格を上回る場合、売却は難しくなります。事前に売買価格とローン残債のすり合わせが必要です。

所有権の移転

売却後の物件は、名義が買主に移転します。将来的な活用が制限されます。

以上のデメリットを十分に検討し、総合的に判断する必要があります。

 

5. リースバックの契約時の注意点

買主の属性と目的を確認

する リースバックの買主となる事業者の属性や目的を確認することが重要です。買主には以下のような種類があります。

種類

概要

不動産会社

不動産売買を主な事業とする企業で、収益物件として取得する

個人投資家

個人で収益物件として取得する

買主の属性によっては、契約期間や買戻し条件などで大きな違いがあります。また、悪質な業者もいるため、事前に買主の信用度や実績を確認する必要があります。

契約条件(期間、家賃、買戻し条件など)の確認

リースバック契約の際は、契約期間や家賃、買戻し条件などの重要な条件を確認する必要があります。

【契約期間】 契約期間は通常5〜10年程度が一般的です。長期にわたると、その後の居住の見通しが立てにくくなるため注意が必要です。

【家賃】
家賃は、買主企業が査定した物件の価値に基づいて決められます。相場より割安な設定が多いのが実情です。

【買戻し条件】
買戻し条件には、以下の2パターンがあります。

買戻し条件

内容

期間固定型

期間満了後に買戻し可能

期間無期限型

期間満了後も継続して買戻し可能

契約時は、買戻し価格の設定方式にも注意が必要です。

このように、リースバック契約では様々な条件を慎重に確認する必要があります。契約内容を熟読し、疑問点は必ず質問しましょう。

 

6. リースバックとリバースモーゲージの違い

資金使途の自由度

リースバックでは、売却を通じて得られた資金を自由に使うことができます。これに対してリバースモーゲージの場合、資金の使途が制限されています。

例えば、リースバックで得られた資金なら、以下のように幅広い使い道が可能です。

  • 老後の生活資金

  • 子供や孫の教育資金

  • 病気や介護の費用

  • 投資資金

  • 旅行や趣味の費用

項目

リースバック

リバースモーゲージ

資金使途

自由

制限あり

つまり、リースバックは一括で資金を手にできるため、自由度が高く柔軟な資金活用が期待できます。一方でリバースモーゲージは資金使途に制限があり、生活費など限られた用途に使えるのが特徴です。

対象物件

リースバックの対象となる物件は、居住用に限定されず、事務所や店舗なども対象となります。

一方、リバースモーゲージの対象となる物件は、居住用の住宅に限定されます。ただし、一定の資産価値があり、担保として適切な物件であることが前提となります。

所有権の移転の有無

リースバックとリバースモーゲージでは、不動産の所有権の移転の有無が大きく異なります。

リースバックの場合、不動産の所有権は売主から買主に完全に移転します。売主は物件を売却し、一時的に賃借人となって物件に住み続けることができます。

リースバック

リバースモーゲージ

所有権の移転

〇(買主に移転)

×

一方、リバースモーゲージでは、売主が所有権を保持したまま資金を調達できます。売主の所有物件を担保に金融機関から資金を借り入れる形になるため、所有権は売主に残されます。

所有権の移転の有無は、将来的な住み続ける権利や相続の扱いなど、大きな違いがあります。リースバックでは物件の明渡しが求められる可能性がありますが、リバースモーゲージなら終身住宅権が保証されています。

リスク負担

リースバックとリバースモーゲージでは、リスク負担が異なります。

リースバック

リバースモーゲージ

所有権

買主に移転

売主に残る

固定資産税

買主が支払

売主が支払

維持管理費用

買主が負担

売主が負担

リースバックでは、所有権が買主に移転するため、売主はもはや税金の支払義務を負いません。一方で、リバースモーゲージでは所有権が売主に残るため、支払義務は継続します。

また、リースバックの場合、維持管理費用は買主が負担するのに対し、リバースモーゲージでは売主が負担し続けます。つまり、リースバックの方が売主のリスク負担が小さくなります。

ただし、リースバックではいずれ住み替えが必要になるというリスクがあります。リバースモーゲージの場合は、生涯当該住宅に住み続けられる可能性があります。

このようにリスク負担は異なるため、ご自身の状況に合わせて適切な選択を行うことが重要です。

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