エレベーター保守の安全性と経費を両立!賃貸オーナー向けメンテナンス会社の選択と見直しポイント

保守点検

マンションやビルのエレベーターは、保守点検が法律で義務付けられています。そのため、一定のメンテナンス費用がかかってきます。不動産賃貸経営においてコストの削減は重要なテーマになるため、ここではエレベーターのメンテナンス内容と費用について解説していきます。

1.エレベーターメンテナンスとは

エレベーターの安全運転を維持するための定期点検・保守作業

エレベーターメンテナンスとは、エレベーターの安全運転を維持するための定期点検・保守作業のことを指します。具体的には以下の項目を行います。

作業内容

概要

定期点検

エレベーター各部の点検・調整・清掃を行う

消耗品交換

ワイヤーロープ、ギヤオイルなどの交換

緊急時対応

故障や事故発生時の修理、運転再開対応

エレベーターは高度な機械設備ですので、適切な点検・メンテナンスを実施し、常に安全な状態を維持することが重要です。建築基準法でもエレベーター保守が義務化されており、メンテナンス体制を整備する必要があります。

 

2.エレベーターメンテナンスの重要性

建築基準法で義務化されている

エレベーターのメンテナンスは、建築基準法で義務付けられています。同法第12条では、「建築物の敷地、構造及び建築設備は、火災、衛生、危害防止その他建築物の安全性を確保するため主務省令で定める技術的基準に適合するものでなければならない。」と定められています。

この技術的基準が定められた「建築物移動等積載性能確保計画の認定及び建築基準法第12条第1項の規定による認定について」(平成12年建設省告示第1347号)において、エレベーターの安全運転を維持するための定期的な検査及び点検が義務付けられています。

検査・点検項目

実施頻度

定期検査検査

6ヶ月~1年に1回

保守点検(努力義務)

1か月に1回以上

このように、エレベーターのメンテナンスは法的に義務付けられており、適切な実施が求められています。メンテナンスを怠れば、重大な事故につながる恐れがあり、建物管理者の安全配慮義務を怠ることにもなります。

メンテナンスを怠ると重大事故の危険性

エレベーターは日々多くの人が利用する重要な設備です。メンテナンスを怠ると、ブレーキ装置の異常や安全装置の不具合などが起こり、重大な人身事故につながる恐れがあります。

実際に過去には、メンテナンス不備から事故が発生した例が複数報告されています。

事故内容

2018年

ブレーキ不具合でエレベーターが落下、乗客2名が重軽傷

2015年

扉の安全装置が作動せず、乗客が挟まれる事故が発生

2011年

メンテナンス不備で停止した際に扉が開き、乗客が転落する事故

このように、メンテナンスを怠ると深刻な事態を招きかねません。建築基準法でもエレベーターの定期点検と保守作業が義務付けられているため、建物所有者はしっかりとメンテナンスを実施する必要があります。

 

3.エレベーターメンテナンス会社の種類

メーカー系会社

– メーカーの部品を使用し、専門性が高い

メーカー系のエレベーターメンテナンス会社はメーカー系はエレベーターを製造販売するメーカーの系列会社のことを指します。

三菱電機株式会社

株式会社日立製作所

株式会社東芝

日本オーチス・エレベータ株式会社

フジテック株式会社

国内のエレベーターシェア約9割を持つ上記の5社を総称して、メーカー系と呼んでいます。

また、メーカー系会社の技術者は、製品の構造や特性を熟知しているため、高い専門性を発揮できます。定期点検では、製品に精通した目でメリハリのある点検を行えます。

このように、メーカー系のメンテナンス会社は、大手の安心感と高い専門性が強みです。設備の安全性を最優先したい場合は、メーカー系を選ぶメリットが大きいでしょう。ただし、メーカー系のメンテナンス会社は自社製品のメンテナンスのみ対応しているため、会社を選ぶ事はできないので注意しましょう。

– 費用が比較的高め

メーカー系のエレベーターメンテナンス会社は、費用面で比較的高めになる傾向にあります。

会社種別

年間メンテナンス費用(目安)

メーカー系

30万円~50万円

独立系

10万円~30万円

上記は一般的な賃貸用エレベーターの場合の目安です。 設備の規模や経年、機種によって費用は変動しますが、メーカー系会社の方が平均して高くなります。

一方で、メーカー系会社は製品に精通しているため、高い技術力とサポート体制が期待できます。 設備の安全性を重視する場合は、メーカー系を選ぶメリットがあります。

独立系会社

– メーカー製品を問わず、幅広く対応

独立系のエレベーターメンテナンス会社は、上記のエレベーターメーカー5社の系列以外のメンテナンス会社になります。

メリット

メーカーに囚われず、コストを抑えられる可能性が高い

様々な機種に対応可能で、選択肢が広がる

独立系はメーカーと比べて技術力や品質面で劣るのではと懸念されますが、基本的に正規部品でメンテナンスするため安全性の問題は無いでしょう。

– 費用を抑えられる可能性

独立系のエレベーターメンテナンス会社は、メーカーに縛られずに幅広い製品に対応できるのが魅力の1つです。また費用面ではメーカー系に比べて低価格に設定されておりメリットがあります。

ただし、独立系にも一長一短があり、メーカーの最新技術に不案する点や、専門性に欠ける面もあります。賃貸オーナーは、設備の状況に合わせて、メリット・デメリットを検討する必要があります。

 

4.エレベーターメンテナンス契約の種類

フルメンテナンス(FM)契約

フルメンテナンス(FM)契約は、エレベーターメーカーが一括して保守・点検・交換修理を行う包括的な契約です。

具体的には以下の特徴があります。

特徴

内容

対象範囲

定期点検・予防保全・故障修理・部品交換までを一括で対応

対応メーカー

製造メーカーによる対応のため、確実な品質が期待できる

料金体系

月額固定料金制が一般的

フルメンテナンス契約は、修理や部品交換の費用も月額料金に含まれ、月額固定料金の契約金額は高めに設定される傾向にあります。そのため、部品交換もなく故障リスクも低い新しいエレベーターの場合は割高に感じるかもしれません。

POG(Parts Oil Grease)契約

POG契約とは、Parts(パーツ)、Oil(オイル)、Grease(グリス)の頭文字を取った名称で、定期検査・保守点検の基本的な内容に絞った契約です。

部品交換が発生した場合はその都度別途料金となるりますが、その分月額料金を安く抑えることができます。また、メンテナンス内容はフルメンテナンス契約と変わらないため、品質が劣るといった心配もありません。

ただし重大な故障や高額な部品交換が発生した場合、追加費用が高額になりやすいので注意が必要です。

 

5.メンテナンス会社の選び方・見直しポイント

設備の状況(新しいか古いか)を確認

エレベーターの設備状況によって、メンテナンスの内容や費用が大きく変わってきます。

メーカー系にするか、独立系にするか。

フルメンテナンス契約にするか、POG契約にするか。

ただし、古い設備は故障リスクが高く、修理費用が発生する可能性があります。POG契約よりは降るメンテナンス契約の方がリスクは抑えられるでしょう。

しかし、表面上の費用が安い方ばかりを選んでも、長期的にはコストが高くつく場合もあるので、設備の状況に合わせて総合的に判断する必要があります。

複数社から見積りを取り比較する

メーカー系のメンテナンス会社は選ぶことができませんが、独立系のメンテナンス会社であれば複数社から見積りを取り、比較検討することが重要です。同じ条件で見積りに出して受け取れば、料金や内容の違いが一目瞭然です。

複数社の内容をより大きく、新たなサービスを発見できる可能性もあります。見積もりの​​際には具体的な作業内容を確認し、比較検討することが大切です。

 

6.まとめ

エレベーターのメンテナンスは、賃貸経営において安全性と経費の両立が重要なポイントです。不備があれば重大事故に繋がる可能性があり、建築基準法でも義務化されています。

メンテナンス会社の選定に際しては、以下の点を押さえましょう。

  • 設備の状況(新しいか古いか)を確認し、それに合わせて適切な契約種別を選ぶ

  • フルメンテナンス契約とPOG契約のメリット・デメリットを理解する

  • メーカー系会社と独立系会社のそれぞれの特徴を把握する

  • 複数社から見積りを取り、技術力と費用を総合的に比較検討する

賃貸経営において安全性は何よりも優先されますが、無駄なコストも避けたいものです。エレベーターメンテナンス会社の選定は、その両立のための重要な判断基準となります。

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