空き家等に係る媒介報酬規制の見直し:800万円以下の不動産仲介手数料は最大30万円までに!

法改正

日本全国で空き家問題が深刻化しています。空き家は地域の安全や景観に悪影響を及ぼすだけでなく、経済的損失も招いています。この問題に対処するため、政府は様々な対策を講じており、その一環として、宅地建物取引業法が改正されました。今回の改正では、800万円以下の不動産に対する仲介手数料が最大30万円に制限緩和されることとなり、空き家の有効活用を促進するための重要な一歩となっています。

この法改正は、低価格帯の不動産取引をより活発にし、地域社会の活性化や不動産市場の健全化を目指しています。特に、地方の空き家問題に対する有効な対策として期待されています。以下では、今回の改正内容やその背景、市場への影響について詳しく見ていきます。

 

不動産仲介手数料の新しい規制

従来の手数料計算方法

不動産売買の仲介手数料は、国土交通省が定めた「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)によって、物件価格の3%+6万円に消費税を加えた金額が上限とされていました。

物件価格の3%+6万円

これは高価格帯の物件には適用しやすいものの、地方の空き家などは物件価格が低く仲介手数料も低くならざるを得ず、また遠方になると通常より交通費や調査費、更に時間もかかって、不動産業者が赤字になることもあり、売主から売却依頼があっても断るケースもあったりと、取引の障害となっていました。

2017年12月8日の改正内容

仲介手数料を定めたこの「昭和45年建設省告示第1552号」は、2017(平成29)年12月8日に改正され、2018(平成30)年1月1日より仲介手数料が「物件売買価格が400万円以下の場合、売主から最大18万円受け取ることができる」と変更されました。

2024年6月21日の改正内容

さらに今回、この「昭和45年建設省告示第1552号」が2024(令和6)年6月21日に改正され、2024(令和6)年7月1日より、「物件売買価格が800万円以下の場合、最大30万円(税抜)受け取ることができる」と変更されました。

参照元:宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額|国土交通省

具体例

例えば、500万円の物件を購入する場合、従来の計算方法では手数料は21万円+消費税となりますが、改正後は仲介手数料を最大30万円+消費税受け取ることが可能になりました。

資料参照元:宅地建物取引業法改正の詳細 – 国土交通省

期待される効果

この改正により、低価格帯の物件取引が促進され、空き家の有効活用が進むことが期待されています。特に地方や郊外での空き家問題の解消に寄与し、地域の活性化や不動産市場の健全化に貢献することが見込まれています。

この新しい規制は、不動産取引をより透明で公正にし、空き家問題の解決に向けた重要なステップとなっています。

 

改正の背景と目的

空き家問題の深刻化

日本全国で空き家の増加が深刻な問題となっており、地域社会や経済に多大な悪影響を及ぼしています。空き家は防犯や衛生の観点からも問題を引き起こし、地域の魅力を低下させる要因となっています。

「令和5年住宅・土地統計調査」結果によると、日本の総住宅数は6502万戸で過去最多でした。その中で常に居住していない「空き家」の数は、全国で900万戸に達し、空き家率は13.8%にまで上昇しています。およそ7軒に1軒が空き家となります。

さらに、放置されている可能性の高い「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に限定すると、385万戸、空き家率は5.9%となります。空き家のうち40%以上が該当するという現状です。

空き家が放置されると、建物は急速に老朽化し倒壊する危険性が高まってきます。庭木や草も伸び放題となると、周囲の景観を乱したり、害獣や害虫による衛生面の問題が生じる可能性もあります。また、犯罪の温床になる、不法侵入者が住みつくなどトラブルを引き起こす原因になりかねません。

低価格帯物件取引の課題

従来の仲介手数料の計算方法は、低価格帯の物件に対して相対的に低額な手数料が課せられるため、取引の障壁となっていました。

地方の空き家などは物件価格が低く仲介手数料も低くならざるを得ず、また遠方になると通常より交通費や調査費、更に時間もかかって、不動産業者が赤字になることもあるため、不動産売買仲介会社の負担が大きくなっており断るケースも多くありました。

法改正の目的

今回の宅地建物取引業法改正は、これらの問題を解決し、空き家の有効活用をさらに促進するための重要なステップです。

宅地・建物の物件価格が50万円でも100万円でも、物件価格が800万円以下の宅地建物であれば、最大30万円+消費税を受け取ることができるようになりました。土地及び建物について、使用の状態は不問とされたことから、築年数等についても関係ありません。

国が宅地建物取引業者による空き家等の流通を強力に後押しするのが今回の改正の目的です。

地域の活性化と市場の健全化

法改正により、特に地方の空き家問題の解決が期待されます。低価格帯の物件取引が増えることで、地域の経済活動が活発になり、空き家の再利用が進むことが見込まれます。また、不動産市場全体の健全化にも寄与すると考えられています。

この改正は、空き家問題の解決に向けた重要な一歩であり、地域社会と不動産市場の両方に良い影響を与えることが期待されています。

 

法改正により、不動産コンサルティング業務を含む媒介業務以外の関連業務の内容が明確になり、仲介手数料とは別に報酬を受け取ることが可能になりました。詳しくは下記記事を参照ください。

2024年7月法改正|媒介業務以外の関連業務(不動産コンサルティング業務)の内容が明確に
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媒介報酬改正の注意点

媒介契約の締結の際に、あらかじめ報酬額について依頼者に説明し、依頼者と不動産会社の両者間で合意する必要があるとされております。

必ず依頼者の合意をとりましょう。売買が決まってからでは遅く、トラブルの元となりますので注意しましょう。

参照元:宅地建物取引業の解釈・運用の考え方|国土交通省

 

空き家対策特別措置法改正と相続登記義務化

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