1. 建築基準法第12条とは?
建築基準法第12条は、日本の建築物に関する安全基準を規定する重要な法律です。この法律の目的は、建築物の安全性と適法性を確保することです。特に第12条は、建築物の所有者や管理者が定期的に建物を検査し、その結果を報告することを義務付けています。この定期報告は、建物の長期的な安全性を維持するために欠かせない手続きです。
2. 定期報告とは?
定期報告とは、建築基準法第12条に基づいて行われる建物の定期的な検査とその結果を報告することを指します。建物の所有者や管理者は、専門の調査員によって建物の安全性や機能性を確認し、その結果を自治体に提出する必要があります。これにより、建築物の不備や危険箇所を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。
3. 建築設備定期調査とは
⑴ 建築設備とは?
建築設備とは、建物の内部に設置されている各種設備のことを指します。具体的には、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備および排水設備などが含まれます。これらの設備は、建物の安全性や居住者の快適性を確保するために重要な役割を果たしています。
⑵ 建築設備定期調査の目的
建築設備定期調査の目的は、建物内の設備が正常に機能しているかを確認し、不具合がないかをチェックすることです。これにより、設備の故障や劣化による事故を未然に防ぐことができます。
⑶ 定期調査の内容
建築設備定期調査では、以下の点を重点的にチェックします:
- 換気設備の機能確認
- 排煙設備の動作確認
- 非常用の照明装置の点灯確認
- 給水設備および排水設備の漏水チェック
⑷ 調査の手順
- 事前準備:調査対象となる設備のリストを作成し、必要な機材を準備します。
- 現地調査:専門の調査員が現地に赴き、設備の動作確認や外観検査を行います。
- 報告書作成:調査結果をもとに、報告書を作成します。報告書には、不具合の有無や今後の対策について記載します。
- 報告書提出:作成した報告書を自治体に提出します。
⑸ 調査後の対応
調査結果に基づいて、不具合が発見された場合は速やかに修繕や改善を行います。また、必要に応じて再調査を実施し、設備が正常に機能することを確認します。
4. 建築設備定期調査の検査対象
換気設備
「無窓居室」「火気使用室」「居室等」にある機械換気設備が対象です。
検査対象となる居室等
無窓居室 :その部屋の床面積の1/20以上の有効開ロ面積を有する窓がない居室
火気使用室:調理室等でコンロ他、火を使用する器具を設けた居室 電熱器は対象外
居室等 :劇場・映画館・公会堂・集会場等の客席がある居室
検査内容
これら各室の換気設備の作動状況および風量測定の他、関係する箇所についても不具合や劣化損傷がないかを検査します。
- 給気機・排気機の作動状況
- 給気ロ・排気ロの設置状況、風道の材質等
- 換気風量の測定(無窓居室・居室等についてはCO2濃度測定で代替可)
- 中央管理方式の機器の性能(温度、湿度、気流、浮遊粉塵、CO、CO2)
- 防火ダンパーの設置状況
排煙設備
排煙設備は火災時に煙を屋外に排出する設備で、建築設備の定期検査では、排煙ロ・排煙機・排煙風道・手動開放装置などから構成される機械排煙設備が対象です。
排煙設備の種類
吸引式:120㎥/分以上、かつ、防煙区画面積あたり1㎥/分で煙を屋外に排出する方式
給気式:送風機により室内に給気することで煙を押し出す方式(告示1437号)
加圧式:送風機により付室等を加圧し、圧力差を形成して煙の流入を防ぐ方式
検査内容
排煙窓のような自然排煙設備は、特定建築物の定期調査で作動状況を確認します。
- 排煙機の作動状況・風量の測定
- 排煙口の設置状況・風量の測定
- 手動開放装置の設置状況
- 排煙風道・防火ダンパーの取り付け状況
- 自家用発電装置の設置状況
非常用の照明装置
停電時や緊急時に避難経路を照らすために使用される非常用の照明装置が対象です。
ただし、避難方向を示す「誘導灯」は消防法で定められた設備であるため、非常用照明と兼用しているものを除き、検査対象外です。
非常用の照明装置の種類
電池内蔵形:器具内に蓄電池を内蔵するタイプのもの(電池の良・不良を充電ランプで確認)
電源別置形:電気室等の蓄電池設備または自家用発電装置から器具へ給電するタイプのもの
確認内容
非常時に避難に支障がないように最低限の照度が確保されているかを確認します。
- 器具の点灯および設置状況
- 照度測定 ※白熱灯1ルクス以上、蛍光灯&LED2ルクス以上
- 配線の状況(別置形)
- 蓄電池設備の状況(別置形)
- 自家用発電装置の設置・燃料等(別置形)
給水設備および排水設備
受水槽・高置水槽・汚水槽・雑排水槽・合併槽がある場合に検査対象となり、これらがない増圧直結給水方式の場合は対象外となります。
また、目視で確認できる範囲の検査であるため、隠蔽部分や埋設部分についても対象外となります。
確認内容
- 飲料用配管および排水配管の取付状況、貫通部の処理の状況
- 給水タンクの設置の状況、保守スペース
- 通気管、オーバーフロー管の防虫網・水抜き管の間接排水等
- 給水ポンプの運転・取付状況
- 排水槽、マンホールの設置状況
- 阻集器の設置状況(厨房・駐車場・美容院等)
- 排水再利用配管設備(中水の着色通水試験:クロスコネクション確認)
5. 法遵守の重要性
建築基準法第12条に基づく定期報告と設備調査は、建物の安全性を維持するために不可欠です。法を遵守することにより、事故やトラブルを未然に防ぎ、安心して建物を利用することができます。また、法的な義務を果たすことで、社会的な信頼も得ることができます。
6. まとめ
建築基準法第12条に基づく定期報告と建築設備定期調査は、建物の安全性と機能性を維持するために非常に重要です。所有者や管理者は、定期的な調査を怠らず、適切な対策を講じることで、安心して建物を利用することができます。法を遵守し、安全で快適な建物環境を保つことが大切です。